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こんにちは、ひろしです。

「子ども向けの公園なんか、どうせ大したことないわ」

そのくらいの気持ちで行って、帰りの車でしばらく黙っていた。

神奈川県厚木市の「あつぎこどもの森公園」。妻ともみじ(柴犬・3歳)と三人で出かけた。名前が「こどもの森」やもんなぁ。わざわざ構えて行くような場所やないやろ、と思っていた。

なめていた。

帰り道に妻と「思ったより全然よかったね」と顔を見合わせていた。そして僕はその数時間前、全長106mのすべり台の頂上で、静かに手を合わせていた。

くぬぎの丘の大きな木とベンチ、手前に柴犬もみじがいる風景
子どもの公園やと思っていたら、ちゃんと大人も黙らせる里山だった

こんな人に読んでほしい

  • 厚木周辺で犬と一緒に歩ける場所を探している人
  • 50代夫婦で「ちょうどいい」自然散策先を探している人
  • 孫や家族と行く前に実際の雰囲気を確かめたい人
  • 「子ども向けの公園やから、大人には物足りへんかも」と思っている人

結論

子ども向けの公園が、50代を一番試してくるとは思わんかった。


目次

  1. 本題の前に。基本情報だけ先に伝えておく
  2. 「あ、これ里山やな」と気づくまで5分もかからんかった
  3. 空中回廊とため池。里山ってこういうことやったんか
  4. 森のすべり台。この公園に勝ちに来た僕が、静かに負けた話
  5. もみじが先で、妻がその先で、僕が最後尾だった
  6. くぬぎの丘で、時間が止まった
  7. 来る前に知っておいてほしいこと
  8. 冒頭の「黙っていた」について

本題の前に。基本情報だけ先に伝えておく

あつぎこどもの森公園の入口にある総合案内板
入口の総合案内板。ここで「思ったより広いぞ」と気づく

どんな公園かという話をする前に、実用的な情報だけ先に済ませておく。

場所は神奈川県厚木市中荻野916-2。荻野運動公園の隣にある。入園も駐車場も無料。開園は4月から9月が9:00から17:00、10月から3月が9:00から16:00。車なら圏央道厚木ICから約18分が目安。第2駐車場が入口に近い。週末や大型連休は混みやすいので、行くなら朝のうちが安心やと思う。

Googleマップであつぎこどもの森公園を開く

あつぎこどもの森公園の入口と駐車場付近の様子
入口周辺は舗装されていて歩きやすい。ここだけ見ると油断する

以上、終わり。ここからが本題だ。


「あ、これ里山やな」と気づくまで5分もかからんかった

入口のターンスタイルゲートをするっと抜けると、すぐ大きな総合案内板が立っている。

マップを見てまず気づいたのは、「フラットな公園ちゃうな」ということやった。

谷がある。丘がある。池がある。田んぼがある。

「あ、里山そのものを歩く公園やな、これ」

来る前に描いていた「ベンチで缶コーヒー」の絵が、音もなく消えた。

姶良丹沢火山灰層の解説板
姶良丹沢火山灰層の解説。子ども向けのはずが、50代が立ち止まる
公園内の地層が見える土の断面
地層の断面。ちゃんと見せ方が作られているのがええ

歩き始めてすぐ、道の脇に解説パネルが立っていた。「姶良丹沢火山灰層」。3万年以上前に九州から飛んできた火山灰が、この土の中に残っているという。「東京軽石」では、さらに昔の箱根火山の話が書いてあった。

子ども向けの解説のはずが、立ち止まって読んでいるのは僕だった。もみじは地面に鼻を押しつけて、自分の調査を続けていた。

このシーン、どっちが賢いのかよくわからん。

入口付近でこちらを見る柴犬もみじ
もみじは学術調査より、匂い調査に忙しい

空中回廊とため池。里山ってこういうことやったんか

森の空中回廊の入口看板とデッキ
森の空中回廊の入口。ここから一気に冒険感が出てくる

案内に沿って進むと「森の空中回廊」の入口が現れる。全長745m、最大地上10m。森を貫くデッキ式の回廊で、木の上を歩くような感覚で進める。

妻が帽子をかぶって先を歩き始めた。

森の中をまっすぐ伸びる空中回廊
木々の間を抜ける空中回廊。思ったよりちゃんと高い

回廊を進むと、木々の隙間から下が見えてくる。ため池が、思ったよりずっと下にあった。「あ、結構高いとこ歩いてたんやな」と気づいた頃には、もう半分来ていた。

妻はそのことに気づいていたのか、いなかったのか。聞かなかった。

ため池の解説板と森の斜面
ため池の解説板。下を見て「あ、けっこう高い」となる
森に囲まれた田んぼ。水が張られ空が映り込んでいる
森に囲まれた田んぼ。都市公園というより里山の景色

田んぼも見えた。公園の中に本物の田んぼがある。農体験プログラムも行われているらしく、谷に沿うように区画が整えられていた。

「こんな場所が厚木にあったんか」と素直に思った。


森のすべり台。この公園に勝ちに来た僕が、静かに負けた話

森の中を長く伸びるすべり台
森のすべり台。写真で見るより、現地で見るほうが圧がある

「森のすべり台」。全長106m。

行く前からそう聞いていた。「106mね、ふーん」と受け流していた。子どもの公園やし、長いだけで怖くはないやろと。

致命的な間違いやった。

頂上まで登って、下を覗いた。スロープが、カーブしながら森の中に消えていく。終点が見えない。どこまで続くのかわからん。

「あ、なんか違うやつや」

声が出た。後ろに誰もいなくてよかった。

森のすべり台のスタート地点へ上がる塔
スタート地点へ上がる塔。ここで50代のプライドが静かに試される

立ったまま、少しだけ手を合わせた。

子ども向けの公園のすべり台の前で、50代の男が手を合わせていた。我ながら情けなかったけど、それよりも自分の心臓の音のほうが気になった。

滑り始めた瞬間にわかった。速い。

この速度、ホンマに大丈夫か?

その疑問が頭の中を走った。答えが出ないまま、もう終わっていた。

メチャクチャ怖かった。

森のすべり台の動画。笑って見られるけど、現地ではちゃんと怖い

「子ども向け」という言葉を、二度と軽く使うまいと思った。なめていた分だけ、ちゃんと返ってきた。

ひとつ補足しておくと、すべり台は雨天・高温・凍結時に閉鎖されることがある。夏の日中はやけど防止で使用不可になる場合もあるので、来る前に公式のお知らせを確認してから来てほしい。


もみじが先で、妻がその先で、僕が最後尾だった

すべり台を降りてから、しばらく歩いた。

公園内の道は砂利や土が多く、丸太を横に並べた段差が続く箇所もある。山道に近い感覚やけど、整備はしっかりされていて、思ったより歩きやすかった。しっかりした靴底の靴で来たほうがええと思う。

柴犬もみじが森の土の道を歩く後ろ姿
土の道を進むもみじ。いつもの散歩より明らかに鼻が忙しい
丸太で整備された森の階段道
丸太の段差が続く道。整備されているけど、足元は山寄り

丸太の段差が連なる登り道で、もみじがぐいっとリードを引っ張った。妻がその先を歩いていた。

もみじが先で、妻がその先で、僕が最後尾だった。そういう並びが、なんとなくいつもの三人の形やなと思った。

こういう道、犬には合っているんやろうな。鼻が忙しそうで、足取りが軽かった。なんか、もみじに散歩してもらっている気分やった。

もみじと歩いていると、犬を連れた人たちと何人もすれ違った。この公園が犬の散歩コースとして定着しているんやろうな、と思った。アスファルトだけではない土の道、深い緑、豊かな匂い。もみじは普段の散歩と全然違う顔をしていた。

くぬぎの丘へ向かう森の道と案内柱
道案内はある。けれど、ちゃんと森の中を歩いている感覚も残っている

犬連れで来る場合は、リードを短めに持ち、園路外へ入らせないこと。自然の中の公園なので、虫や野生動物への注意も必要になる。自由に見えて、守るべきルールはちゃんとある。


くぬぎの丘で、時間が止まった

急な丸太段差をひとつ越えると、ふいに視界が開けた。

くぬぎの木が一本、どんと立っていた。幹が太くて、枝が空に大きく広がっている。その下にベンチがある。草地が夏の光を受けて明るい緑に光っていて、奥の森の向こうに山の稜線がやわらかく見えた。

くぬぎの丘。大きなクヌギの木の下にベンチ、奥に妻、手前にもみじ、遠くに山の稜線
くぬぎの丘。クヌギの木が一本、どんと立っていた

妻がその先をゆっくり歩いていた。もみじが僕の隣で、その木を見上げていた。

何も話さなかったけれど、悪い時間じゃなかった。

気持ちよかった。ほんまに。

さっきまですべり台の前で手を合わせていた50代の男が、丘の上でぼーっとしていた。こういう時間が、意外とどこにもないようで、案外どこかに転がっているのかもしれん。

金網で管理されたため池と周辺の住宅地の風景
金網で囲まれたため池。里山の水環境がしっかり管理されている
森に囲まれた農業体験エリアと作業小屋の風景
農業体験エリアと森。この距離感がちょうどいい

来る前に知っておいてほしいこと

長袖長ズボンと虫よけスプレーは持っていったほうがいい。園内には「塩ポスト」が設置されていて、ヤマビルにくっつかれたら塩をかけて取る仕組みになっている。3月から11月頃にかけて活動するらしい。

ヤマビル注意の表示がある塩ポスト
塩ポスト。見た瞬間、こちらの緊張感も少し上がる
サル注意の看板
サル注意の看板。自然の中にいることを思い出す
イノシシ注意の看板
イノシシ注意の看板。でも僕は、すべり台のほうが怖かった

「イノシシ注意」の看板も数カ所で見かけた。でも正直、さっきのすべり台のほうが怖かった。それくらいすべり台が怖かった、ということでもある。

入口周辺は舗装されていて進みやすいが、園内の大半は砂利・土・階段だ。ベビーカーで全面的に回るのは難しいと思う。お弁当と飲み物は持参が基本。自販機は管理棟と作業小屋にある。

公園内の主な情報と開園時間が書かれた案内板
開園時間や注意事項は入口で確認できる。来園前には公式情報も見ておきたい

冒頭の「黙っていた」について

最初に「帰りの車でしばらく黙っていた」と書いた。

なぜ黙っていたのか、というと、べつに理由はない。それだけの時間だったということやと思う。

子ども向けの公園に行って、予想をいい意味で裏切られて、すべり台に本気でビビって、丘の上でぼーっとして、帰ってきた。

なめていた公園に、静かに負けた一日やった。

もみじは多分、そんなことは全然思っていない。ただ楽しかっただけやろうな。

羨ましいな、と少し思った。

また行こうと思う。今度は弁当を持って。


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